鹿狼山から  
7 鹿狼山のオトコヨウゾメ      小幡 仁子

鹿狼山に植生する樹木や花々の変化がおもしろくてここ3年くらい、カメラを片手に通っている。月平均2,3回、年に30回くらいになるだろうか。それでも期間が開くときもあるから、四季折々の植物の姿をつぶさに捉えるところまでは至らない。
さて、オトコヨウゾメは早くから気になっていた樹木である。気になってはいたけれど、始めのころはたいした図鑑も持ってはおらず、この花の名前を長い間知らずに過ごしていた。名前が分かったのは観察会のときである。第82回の「水原地区、早春の観察会」のとき、笹森山の急斜面を登っていたら、鹿狼山と同じこの木があった。そしたら、会員のSさんが「これはオトコヨウゾメっていうのよ」と教えてくれた。へえ?なぜにこの可憐で美しい花を咲かせる木がオトコなのか?ずいぶん変わった名前だと思ったのである。
この樹木はそんなに太陽の光を欲しがらないようで、鹿狼山では登山道脇のコナラやケヤキの下に静かに白い花を咲かせている。樹高は2mくらいのものである。ガマズミの仲間だけど、あんなに固まって上を向いて誇らしげには咲かない。自己主張をしない花である。集散花序で、花はまばらである。ちょっとうつむき加減なのが風情があってなかなか良いのである。高山の会のKさんもこのオトコヨウゾメの花については、「雌しべが、マリリンモンローのお口のようで、薄紅色で綺麗」と言っていた。ルーペでのぞくと本当にそうである。 
 ところで、私が住む相馬地方ではガマズミのことをヨツズミといって、子供のころはこの実をよく食べたものである。特に美味しかったという記憶はないが、よく熟すると甘酸っぱくて食べることができた。その頃はおやつと言えばサツマイモやジャガイモばかりだったからヨツズミの実の甘酸っぱさは子供にとっては特別だったかもしれない。
このヨツズミを中部地方ではヨウゾメというらしい。なるほどヨツズミとヨウゾメは音も似ている。図鑑でオトコヨウゾメを調べると、この実が食用に適さないので「オトコ」を冠していると書いてあった。はあ、そうか。食べられないもの、美味しくないものには「オトコ」がつくのか。でも待てよ、ナツハゼなどは別名ヤマオトコというけれど、食べてはおいしいなあ。などと考えていると、植物の名前ひとつとっても奥が深いものだと思われた。
 オトコヨウゾメの花は可憐で美しいが、花が終わると枝豆を小さくしたような緑色のつやつやした実を付ける。その実は少しずつ少しずつ色を変えていくのである。黄色みを帯びたオレンジ色になったときは感動を覚えた。この実が真っ赤になる頃、鹿狼山も紅葉の季節を迎える。その後の冬枯れの里山も良いものである。

開花前 4月29日

開花 5月12日

色づく実 9月9日

赤い実 11月24日