鹿狼山から  
46 亘理地塁山地を歩く    小幡 仁子

亘理地塁山地のことはこれまで何回か紹介してきた。鹿狼山から始まって北へ連なる山々が、阿武隈川に降りて終わるまでのおよそ30kmをいうのである。最高峰は鹿狼山430mで、あとは300m前後の低山が続き、最後の七峰山(ななうねやま)は124mである。
 ここを端から端まで歩こうと思い立ち、山仲間にも呼びかけて、今回で4回目になる。今回は最後の部分で割山峠〜槻木大橋を歩いた。以前から、ここは道が荒れていて、工事も入っていて歩きにくいと聞いていた。しかし、ネットを見てみると結構人は歩いているようだし、亘理町のグループが整備をしているようなので、歩けるだろうとは思ったのである。
 12月2日、槻木大橋の空き地に車をデポし、割山峠にもう1台置いて、送電線の下から山に入った。入り口には目印に赤いテープが貼られてあり、送電線用の道なので踏み跡もしっかりしていた。鉄塔を過ぎて尾根を歩くが、踏み跡もまあまあ分かる状況だった。
亘理地塁山地はどこを歩いても鬱蒼とした杉林の中を通る。ここだって50年くらい前は薪炭林として落葉広葉樹で覆われていたのだろうが、今は手入れされない杉林のままだから、薄暗くて寒い。建築用として杉を使うなら、枝打ちや間引きをして管理すればそれなりに役に立つのだろうが、安い外国産の木材に押されたり、林業に従事する後継者がいなかったりして放置されっぱなしだ。悲しい歴史である。私の実家でも地区で杉林の共有林を持っているが、誰も手入れをする人がいないと父は言っていた。
さて、歩き始めて1時間が過ぎると、突然視界が大きく開いた。箕輪峠である。「わあ!山がな〜い!」と誰かが言った。昔はあったはずであろう山が無くなって、向こうに峠道が見えた。今日は日曜日なので静かだが、平日はショベルカーやダンプカーが行き交って砂利を運び出しているのだろう。それにしてもすごい。すでに山一個分は無くなっている感じだ。鹿狼山の南側にあった二鞍山も無くなってしまいそうだが、他にも同じところがあったのだと思った。ここをどうやって降りて渡ろうかと思ったら、ちゃんと踏み跡があった。工事現場の中の通れそうな所を選んで歩き、道路に這い上がった。
 道路脇に「馬頭観音」の石碑があった。馬頭観音は馬の守護神であるから、昔は馬に荷を引かせてこの峠を歩いたということなのだろう。その頃は細い山道で、山の姿はどのようだったのだろうか。土台部分が新しいから、おそらく採石を始める時に移動したものと思われた。
 ここから三門山(みつもんやま)までは1時間ほどの道のりだが、倒木や藤・葛などの蔓があったりして歩きにくくなってきた。三門山には大きい電波塔が2カ所あり、ここで昼食とした。その後、七峰山に向かって行ったが、杉の枯れ葉か深く降り積もって歩きにくいことこの上なかった。左手に阿武隈川が見えてきた頃、突然、立派な樅の木林が現れた。これはどうしたことだろうか。薪炭の原料だったコナラなどの広葉樹を切り、その代わりに杉を植えたが、その時、この樅の木は残したのかもしれないと思った。鹿狼山周辺でも杉の植林をするときにモミの木を伐採し、それは良い値段で売れたそうだ。相馬市の塩手山にも立派な樅の木林がある。これは浜通りの自然な植生の名残ということだろう。
 この辺りから標識が所々に出てきて、踏み跡もしっかりしてきた。七峰山の頂上にも三角点と新しい看板があった。道は「鹿島緒名太神社」に続いており、無事に槻木大橋にたどり着くことができた。
 これからの亘理地塁山地はどうなるのだろうか。杉林は放置され、山は採石場として削り取られていくばかりなのか。考えさせられるヤブ山歩きとなった。(2018/12/20記)

  

大きく削り取られた箕輪峠の両脇の山

立派な樅の木林が現れた

阿武隈川側の七峰山