鹿狼山から  
41 〜再びミズアオイ    小幡 仁子

今年9月、稲刈り前の田んぼを見に行ったら「ミズアオイ」が再び咲いていた。昨年は咲いていなかったのにどうしたことだろう。ミズアオイを初めて見たのは2年前の事であった。稲の中に何か青い物があるので不思議に思って見てみたのだった。その青紫の美しい花ミズアオイは、昔は水田雑草として嫌われ、昭和30年頃に除草剤で駆除されてからはすっかり姿を消してしまったという。この話は実家の父から聞いたことである。昨年は咲いているかと思って見に行ったら跡形も無く、代わりにこのあたりでは「オトゲナシ」と言われるオモダカが咲いていた。今年はどうなっているだろうと思って田んぼに行ってみたのである。そうしたら、ミズアオイも、オモダカも両方一緒に咲いていた。

 近くの田んぼはどうなのだろうと思って、道路向かいの田んぼを見てみたら、オモダカが沢山あった。田んぼの畦に立て札があって「特別栽培農産物圃場・農林水産省新ガイドラインによる」と書いてあった。この田んぼは「特別栽培農産物圃場」であることが分かった。

 「特別栽培農産物」「農林水産省新ガイドライン」とは何かを調べてみた。特別栽培農産物は「科学的に合成された農薬及び肥料の使用を低減したもの」とあった。 ミズアオイやオモダカが田んぼの中にあるのは農薬や除草剤を低減しているからということなのだろう。                  

科学的に合成された農薬及び肥料の使用を低減した農産物は、身体に良いに違いない。実家の父も、畑で虫が沢山付いたりすると消毒をしている。「消毒をしたばかりだから、今はまだ食べられない」、「これは消毒したからよく洗って食べろ」、「消毒はしたくないが、先に虫にやられてしまうから」と言っている。キャベツの類はすぐ青虫にやられるから、父は捕虫網でチョウチョを捕ったり、薄い寒冷紗を掛けて虫が付かないようにしている。畑は雑草と虫との戦いだ。田んぼも同様と思う。                 

ミズアオイの茎は里芋の茎に似ていた。しっかり土の中に根を張っているようだった。(写真の奧に切り取られた株の跡がある)数十年前、除草剤が無い時代にはこれを人力で除去していた訳だから、さぞかし大変だったことだろう。自然と向き合ってやっと収穫したお米の価値は計り知れないものだったと思う。

さて、この日、私は「ウミミドリ」はどうなったことだろうと思い海岸方面にも行ってみた。常磐線は6年前の大津波で破壊されてから、少し内陸に移動し、昨年12月に再開した。常磐線跡は高く嵩上げされ、堤防のようになっていた。これは海沿いを南北に走る道路になる予定だ。工事車両が入り溝が掘られて、ウミミドリを確認することはできなかった。ウロウロと歩いていたら小さな流れにミズアオイが咲いているの を発見した。近くにある水草が何であるかは分からなかった。オオフサモかホザキフサモかもしれない。

昔は、このような湿地には普通にミズアオイは咲いていたのだろう。津波により人が作った物はすべて流されてしまい、その後に最初に蘇った物は以前の自然のままの姿なのであろう。この場所も今後はどうなるのか分からない。

 それにしても、種子というものは強い物だ。中尊寺ハスもそうだが、再び花咲ける環境を待って土中に眠っているわけだから (2017/09/18 記)。

  
田んぼの中のミズアオイとオモダカ  田んぼにあった立て札  常磐線跡は道路になる予定  震湿地のミズアオイ