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鹿狼山から |
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毎年7月20日頃になると鹿狼山にはヤマユリが咲く。ヤマユリは美しい花だ。花弁の先端がひらひらと反り返り、白く大柄で、女王のように誇らしげに咲いている。鹿狼山には10個くらいの花を付ける立派な株が鳥居の近くや頂上にあり、また、登山道沿いにも沢山のヤマユリが咲いていた。しかし、今夏7月21日に行ってみたが、鳥居の近くにあったはずの大株が無くなっていたし、登山道を歩いてみてもヤマユリは激減しているようだった。頂上に何人かの人がいたので「ヤマユリが大部減りましたね。どうしたんでしょう?」と聞くと「イノシシが掘って百合根を食べたんだよ。人が食べて美味しいものはイノシシだって食べたいんだろうね」ということだった。そういえば、昨年も、鹿狼山にはイノシシが地面を掘った跡がずいぶんあったから、私はミミズを掘って食べているものと思ったが、ヤマユリの球根まで食べていたのだ。 |
鹿狼山ではヤマユリの大株が消えた |
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阿武隈の山々にイノシシが増えたのは、福島第一原発の爆発により、土が放射能で汚染され、その土を食べるミミズが汚染され、ミミズを好んで食べるイノシシの肉が高濃度に汚染されて誰もイノシシを獲らなくなったからである。あれから国道115号線を走っているとイノシシの姿を見るようになったし、車とイノシシが衝突して車がベコッとへこんだとかの話も聞くようになった。テレビや新聞などでも、時折、原発関連の話題として取り上げられたりしている。新地町でも以前から鹿狼山の麓の杉目地区ではイノシシに畑を荒らされたという話を聞いたことがあったが、頭数が増えて、今はずっと下の地区まで降りてきているらしい。ジャガイモなども大部やられて、もう作らないという人も出ているそうである。また、相馬市の磯部地区などの海岸部でもイノシシの姿が見られるというから、交通量の多い6号国道をどう渡って行ったのだろうか。いずれにしても、イノシシは山にある食べ物だけでは足りないから里に降りてきているのだろう。2週間に一度、食品の放射性物質の測定結果が回覧板で回って来るが、イノシシの肉は680?/sの時があった。もちろん、出荷及び摂取を控えるように国からの指示があるのだから、誰も食べないだろう。イノシシは増えるばかりなのだろうか。 知人に鹿狼山のヤマユリの話をした。知人はこのように言っていた。イノシシの被害がひどいから、イノシシ駆除に300万円ほどの予算が出たそうである。ところがイノシシを土に埋める訳にいかないので、ペット火葬場に運んで焼却処分をすると5万円かかり、捕獲してくれた人に1万円払うと、1頭あたり6万円ほどかかるそうで、とりあえず50頭分の予算はあるが、それで何とかなるものかどうかは分からないらしいと。汚染されたイノシシを焼却したら、それなりの放射能は撒かれてしまうわけで、それはどうなのか。でも、あのように大型の動物を土に埋めたとすると、衛生上の問題や土壌汚染の問題にもなるのだろうし、本当にどうにもならない困ったことだねと私達は話したのだった。また、折も折、今度は福島第一原発汚染水タンクから300tもの高濃度汚染水が海に流れ出たというニュースが聞こえてきた。これだって、海の底にいる小さな生き物が汚染され、それを大きな魚が食べ、またそれをもっと大きい魚が食べるという構造だから、もう魚は危険で食べられないということになるだろう。 鹿狼山にヤマユリが無くなり、私のささやかな季節の楽しみがなくなったのは、元はといえば原発事故によるものだ。まあ、私は趣味の範囲だから我慢もしようが、やはり鹿狼山の7月に大輪のヤマユリが無いのは寂しい話である。しかし、私達はこんなことでは次世代の子ども達に、安心で安全な食べ物を残してやることも、美しい自然を残してやることもできないのだとしみじみ思う。放射能汚染により生態系のバランスが崩れてしまった阿武隈の山々が元に戻る日はあるのだろうか。一度崩れたものを元に戻すことは難しいと思うが・・・。 (2013/09/06 記) |
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