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鹿狼山から |
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今年の夏は暑かった。相馬は冬が暖かく、夏は涼しいからいいね、とよく言われるが、それは本当なのか?と思われるほど暑かった。ところで、私は夏の休暇で、家の大掃除をすることにしている。(冬は寒いから大掃除はしない)庭木の剪定から始まって、ガラス磨きや窓の桟拭き、カーテンの洗濯、押し入れの中、台所等、不要品は思い切って捨ててしまう。さあ、今年もやるぞと始まったが、毎日あまりにも暑くて大汗をかき、我慢の限界を超えてはお風呂に入ってアイスを食べ、お昼寝をしてしまうという繰り返しを3、4日していた。そこへ、台風と共にほんの少し涼風もやってきたのが8月13日であった。そうだ、ここしばらく鹿狼山に行ってなかったと、早速出かけることにした。 鹿狼山はすでに秋の気配がした。ダイコンソウとキツネノボタンの花は終わり、実になっていた。早速、ルーペで実を覗いてみた。ダイコンソウもキツノボタンも実から針のような棘が出ていた。ああそうだった、こういうのを動物散布とか「引っ付き虫」とか言って、動物の毛や人の衣服にくっついて種を遠くに運ぶのだった、と思い出した。そういえば、西和賀のカタクリの会に参加したとき、こういう「引っ付き虫」を何と言うのかが話題になった。福島県人と宮城県人は「バカ」、岩手県人は「ドロボー」と言っていた。私も子どもの頃は、この手の実を友達の背中に投げつけて「バカが付いてる。ヤーイ!」などとはやしたてて遊んだものである。その時に、秋田県人が「ほれは、おら方ではヌサバリコっつうんだ」と言った。「はあ、ヌサバリコですか?フランス語みたいですねえ」と一同初めて聞く言葉に感心した。ヌの発音がノに近いような鼻に抜ける音だった。 後で秋田県出身の同僚に聞いてみたら、服にそんな実が付くと確かに「ヌサバリコくっ付いている」と言うし、それから、子どもが大人に甘えてべたべたくっ付いたりすることも「ヌサバル」って言うんです。それに秋田では、言葉の最後によく「〜コ」と付けますから。ということだった。そうすると、ヌサバリコというのは、言葉の意味そのものが名前になっているので、私たちが「バカ」と呼んでいるよりずっと筋が通っているわけである。それに「バカ」や「ドロボー」と言うより、「ヌサバリコ」と言う方がずっと聞こえがいいように思われた。 (ふ〜む。これから鹿狼山では「引っ付き虫」を「ヌサバリコ」と呼ぼう。) さて、ダイコンソウの実をよく見てみると、棘の先端にもう一つ付属物があり、キツネノボタンの方は棘の先がそのまま鉤状になっている。この差は何だろうと素朴な疑問がわいたのでネットで調べてみたら、驚くべきことが分かった。 「ダイコンソウの実・・鉤のように曲がった先にもう一度曲がった物がついていて、触っても引っかかりません。種子が熟してくると先端に付いていた物は取れてなくなり、鋭くとがって鉤状になった先が服に付くようになります。種子が熟さない内に運ばれてしまっては困ります。それまでの間は何かが触れても引っかからないようになっていて、種子が熟してきたらくっつきやすい形にかわる。こんな小さな草にも、素晴らしい工夫がなされていました。・・この棘は雌しべの花柱、種子が未熟な時に何かにくっつかないように防御していたのは柱頭でした。効率よく種子を散布してもらうための工夫だけでも素晴らしいのに、・・受粉に必要だった柱頭が実が熟するまで働き続けるというのもすごい仕組みです。」この説明を読んで、植物の世界は実に良くできていると思った。と同時に、なぜキツネノボタンは最初から棘が鉤状なのかという素朴な疑問がわいた。きっとそのことにも理由があるのだろうが・・。(2010/09/12) |
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ダイコンソウの実 棘は花柱、棘の先端の付属物は柱頭である |
キツネノボタンの実 種子の先端は鉤状になっている |
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